
財力を掛けて粋を競った相手の紀伊国屋文左衛門は、悪銭廃止礼によって没落した。勝ち残った奈良屋茂左衛門の胸に一陣の風が吹き抜ける。・・・・表題作「霜の朝」他短編集。
今回は「怠け者」の紹介。まともな暮らしができず博打打などで生計を立てていた弥太平も50歳を超え、甥の佐吉に付き添われ「丸子屋」に下男として骨を埋めるつもりで奉公に上ったが、いつものサボり癖が頭をもたげる。
そんな弥太平もあっという間にぼろが出てしまい正体を見破られるが、おかみさんだけは人を疑うことを知らなかった。
だが、昔の仲間からの誘いに断れず、丸子屋への盗人の手引きを一度は引き受けたが、その晩警戒心の無いおかみさんの湯浴みを見て、決心した。
「いやだ俺にはできねえ」。熱っぽく膨らんだ頬に又裂けるような痛みが走って、目の中に火花が散った。
その火花の中に弥太平は幻のようにおっとり微笑んでいるおかみの白い立ち姿を見た。
荒んだ心の持ち主が老いの境遇に架かったそんな主人公にも、最後まで捨てきれない救いの手をを差し延べる藤沢周平。読者にも暖かい心根を残す。
posted by シゲ(^-^)v at 21:28|
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