今、この本が若い人に読まれているらしい。
小林多喜二は明治36年秋田県生まれ、小樽高商を卒業、北海道拓殖銀行に就職し、昭和4年に解雇。プロレタリア文学に目覚め、実際に労働運動にかかわる。非合法下の共産党に入党し、29歳で警察に逮捕され拷問により殺された筋金入りの左翼運動家だ。
蟹工船は航船ではなく工船であり、ロシア近海まで航海し、東北や北海道の炭鉱や農業の食い詰め労働者を奴隷のように使い、資本家が暴利をむさぼり、海軍もまたこれを保護するという国策産業だった。
何故今この本が読まれるか?キーワードはワーキングプアー。企業の効率化の下に正規社員は派遣社員や契約社員にハイスピードで切り替えられていく。それでも景気の良い時は労働の多様化などと言われ、好きな時間に働き、好きな仕事に付けると、派遣労働はもてはやされ、ともすると嫌な仕事もガマンしなければならない正社員は敬遠された。
ただ、今はどうなのか。派遣社員も景気が上向きのときは、決して企業から派遣契約を終了させることは無かったが、この不況下には契約の更新はされない場合もある。解雇ではない、契約留めだと。結果住居を追い出され、ホームレスにならざるを得ない人も。
こんな状況がまさに高度経済社会での奴隷のようであり、この本が共感を呼んだと言うのだろうか?
確かに、規制緩和やビッグバンに対する無策のの結末かもかもしれない。
中国製は安いと喜んでいたが、それも次第に高くなり、日本製は高嶺の花だ。
日本の若者は今やや中国の人件費と裸で競争させられていると見れないことは無いが。・・・。
2009年03月15日
蟹工船〜小林多喜二
2008年11月18日
深夜特急3〜沢木耕太郎
2008年11月10日
深夜特急2〜沢木耕太郎
2008年10月27日
深夜特急1(香港・マカオ)〜沢木耕太郎
2008年10月04日
山本一力〜いっぽん桜


山本一力の「いっぽん桜」はこの小説で「桜」、「萩」、「すいかずら」、「あさがお」の4篇で毎年変らなく咲く花を対比し、江戸の人情の変らない様を、変って欲しくない人の心を描いている。

花は毎年同じように咲いてはいるが、どこか違うという。人も環境に応じて変るものだが、娘への愛(いっぽん桜、そこにすいかずら)連れ合いへの愛(萩ゆれて)、義父の愛(芒種の朝顔)を気丈に守り抜く人情が温かく表現されていた。

江戸は商人も下町の庶民も世間を意識し、商人は儲けはするが蓄財を遊びに、芸術文化にと。庶民は高い職人技術と下町人情を守る。
次世代に何も良いものを伝えられない現代は、どこへ向かって行くのだろうか?

2008年07月27日
損料屋喜八郎始末控え〜山本一力
2008年07月16日
長門守の陰謀〜藤沢周平
2008年07月09日
男の隠れ家を持ってみた〜北尾トロ


男の隠れ家を持ってみたい願望はある。一般には飲み屋のような隠れ家を想像するが、この本の主人公は別の町にアパートを借りて、しかもと土地の住人となってその土地と住民とコミュニケーションを深めると言うものだ。

だがそんなうまくはいかないと思う。その土地の人と話題を共有できるというのは、そこで何がしかの生活実感がないと、環境を自我として共有することは難しいのではないか。

北尾トロはペンネームなので、現在ペンネームを主体とした付き合いとなっているけど、本名でアパートを借りて素の自分で付き合いたいというのだが・・・。
う〜ん、分からない。普段から素の自分でしか表に出していないので、良く分からない。

2008年06月12日
よろずや平四郎活人剣〜藤沢周平

思案の挙句、やがて平四郎は奇妙な看板を掲げる。・・・・喧嘩五十文、口論二十問、とりもどし物百文、よろず揉め事仲裁仕る。上下950ページの長編。
この小説は1998年NHKで,昨年はTV東京で放映された。NHKは主人公平四郎は高嶋政伸が、TV東京では中村俊介が演じた。
小説を読んだ後TVや映画で見ると詳細な部分が足りず、がっかりすることがある。今回はTV見ていた物語を小説で読んだが、藤沢周平の情景描写が精緻なせいか、TVのイメージを補って面白さが増幅した。
でも、950ページは長い。だが通勤時間にブックカバーを開くのが楽しく、退屈しない。 藤沢周平〜売れています。